零売薬局の現状・今後・課題について

「零売薬局は、今後どのようになっていくのだろう…」

「零売薬局にはどのような課題があるのだろう…」

このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?零売薬局は新しい業態であるため、業界の今後や課題については気になる点ですよね?そこで今回は、「零売薬局の現状・今後・課題」をテーマにお届けしていきます。

零売薬局の現状について

まずは、零売薬局の現状について見ていきましょう。

病院に受診する時間がない人に重宝されている

零売薬局は処方箋なしで病院の薬を買う事ができるため、受診する時間がない人や、新型コロナウイルスの感染リスクを避けたいといった人に重宝されています。また、零売薬局が拡がることで医療費の削減につながると期待されています。

まだまだ一般に認知がされていない

零売薬局自体が一般に認知されていない状態であるため、利用者もまだまだ少ないと言えます。そして、零売薬局の歴史も浅いため、零売制度自体に対する国のガイドラインや基準がなかったりと、業界の基盤が整えられていない状況です。

まだまだ店舗数が少ない

零売薬局はまだまだ店舗数が少ないため、「利用したいと思っても通える範囲に零売薬局がない…」という場合があります。

零売薬局の今後について

続いて、零売薬局の今後について見ていきましょう。

零売薬局の店舗数は増加する

零売薬局は、忙しい人の時短や医療費の削減のつながる今の時代に即したサービスであるため、零売制度の認知度向上とともに零売薬局の店舗数は増加していくと予想されます。セルフケア薬局も初の零売薬局チェーンとして、東京を中心に神奈川県・愛知県・大阪府と店舗数を拡大しています。

薬剤師の活躍の場が広がる

零売薬局の仕組みとして、医師の診察なく薬剤師の判断のもと(ルール遵守)薬が提供されます。これまで医療用医薬品の提供にあたって処方箋をもとに薬が販売されていたわけですが、零売薬局では直接販売となり薬剤師が判断しなければならない範囲が広がります。

薬剤師という専門家がおこなえることが増えていくことで、薬剤師の重要度は高まり、ますます活躍の場が広がっていくことでしょう。

零売薬局はより整えられていく

零売薬局は新しい業態であるため業界の基盤が整えられていない状況ですが、これから間違いなく仕組みが整えられていきます。2020年3月26日には一般社団法人日本零売薬局協会が設立され、利用者の安心・安全なサービス提供を目指して活動がおこなわれています。協会が中心となりながら、零売薬局が認知されていくようになればQOLも向上していくことでしょう。

零売薬局で考えられる課題について

続いて、零売薬局で考えられる課題について見ていきましょう。

安全面の課題

零売という制度は受診する手間と時間が省かれるといったメリットがありますが、やむを得ない事情があるにせよ病院を避けることにより、重大な病気の発覚が遅れる可能性があります。
薬剤師に相談をして安全に薬を手にすることはできますが、利用者自身が零売薬局を適切に利用するという認識を持たなければならないのです。
零売薬局側は、利用者の重大な病気の発覚が遅れたりすることがないように、適切なタイミングでの利用を伝えたり受診勧奨を正しくする必要があると言えます。

医薬品副作用被害救済制度の課題

前項で、医師の診察を受けないことで重大な病気の発覚が遅れる可能性があるとお伝えしましたが、大きな副作用が発生した際の救済が不十分な点も課題のひとつです。
保険調剤の場合、正しく服用したにも関わらず重大な副作用が起きた際には、「医薬品副作用被害救済制度」の補償対象となります。この医薬品副作用被害救済制度は、入院治療が必要になるほどの副作用が起きた場合に医療手当や障害年金を受け取ることができるものですが、零売薬局で購入した薬で重大な副作用が起きた場合、零売理由が妥当でなければ給付を受けられない可能性があります。
ですので、零売薬局側は零売のルールを徹底して薬を提供し、購入者側は制度を理解したうえで購入する、ということが大切になってきます。

近隣の医療機関との関係性における課題

零売の拡大は医療費削減に大きな効果をもたらすと考えられますが、一方で病院への受診抑制につながるとも言えます。病院の収益減少が顕著になれば、零売薬局と医療機関との関係性に溝ができてしまう可能性も考えられ、病院と零売薬局だけでなくドラッグストアや調剤薬局にとっても気になる存在となります。

ただし、競争のなかでそれぞれがより良いサービスを提供する動きにつながれば、利用者にとっては選択肢が増えて利便性は高くなっていくでしょう。また、新型コロナウイルスの感染拡大などで医療体制が逼迫することもありますが、それを軽減する効果も期待されますので病院側にもメリットがあるといえます。

利益確保の課題

保険調剤薬局では、近隣の病院から発行される処方箋によって、安定的な利益を見込むことができます。

しかし零売薬局の場合そもそも処方箋なしで医療用医薬品を販売するわけですので、病院からの安定的な送客は見込めません。また、零売薬局の場合には保険適用がされず、高額の医薬品購入が少ないこともあります。ですので、零売薬局側は利益をいかに確保するか、という課題をクリアする必要があり、そのためにはより零売薬局が認知されていく必要があるでしょう。

価格設定の課題

零売薬局で販売される医療用医薬品は保険適用外となっており、同じ薬であっても処方箋から薬を手にするときとは金額が異なります。そして、薬の価格は零売薬局が設定することができますので、薬の価格が安くなる場合もありますが、高くなってしまう場合も考えられます。そのため零売薬局側は適正な価格設定が求められます。
※病院に行けば診察料や処方箋料などがかかりますが、零売薬局の場合、そのような費用はかからないというメリットがあります。

薬の濫用・依存について

薬物依存というと違法薬物(大麻など)を想像するかもしれませんが、風邪薬や咳止めのような一般用医薬品を濫用することで、薬物依存となってしまう人もいます。具体的に、厚生労働大臣が濫用などのおそれのある医薬品に指定しているのは、エフェドリン、メチルエフェドリン(鎮咳去痰薬のうち、内用液剤に限る)プソイドエフェドリン、コデイン(鎮咳去痰薬に限る)ジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る)、ブロムワレリル尿素の6成分となっています。

本来の目的とは異なる使用がされてはいけない

セルフメディケーションが注目されている現代で一般市販薬は、ドラッグストアに行けば手軽に入手することができ、インターネットでも購入(第二類・第三類)することが可能です。零売薬局は対面での販売となりますが、一般用医薬品と同じように受診せずとも直接医療用医薬品を購入することができるので、処方箋を受け取ってからの手軽さがあります。
その手軽さにより、医療用医薬品の濫用が一般用医薬品の濫用と同じように起こる可能性も0とは言い切れません。そのため零売薬局側は、本来の目的ではない使用がなされないように、十分な聞き取りと判断が薬剤師には求められます。

まとめ:零売薬局の現状・今後・課題について

いかがでしたか?今回のまとめは下記になります。

零売薬局の現状…まだまだ一般に認知がされておらず店舗数も少ないが、病院に受診する時間がない人に重宝されている

零売薬局の今後…零売薬局の店舗数は増加し、基盤も整えられていく。そして、薬剤師の活動の場が広がる

零売薬局の課題…安全面・近隣の医療機関との関係性・利益確保といった課題がある

零売薬局はこれから発展していくことが予想されますが、発展のためにもそれぞれの事業者が安全に医薬品を提供できるよう努めていくことが、何より大切です。セルフケア薬局はその点を注意しながら、より良いサービスを提供できるよう運営してまいります。

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